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デザイン関連書籍を中心にまとめや感想などを書きます

リチャード・ソウル・ワーマン『理解の秘密―マジカル・インストラクション』

_book コミュニケーション コーチング

理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)

理解の秘密―マジカル・インストラクション (BOOKS IN・FORM Special)

私たちの生活を動かしている膨大な量のインストラクション。それは情報伝達の手段であり、全コミュニケーションの半分はインストラクションのやり取りであると著者のワーマンは言う。インストラクションを噛み砕いて言えば「説明」とも言える。人と人とのコミュニケーションを成立させるための道具である。ただ、我々はコミュニケーションの基本ともなるこのインストラクションについての学習をまともに受けてこなかった。それがあらゆる問題を生む。いつでも職場でのコミュニケーションは難しく、多機能の機械はまともに扱えない。

本書の発行が1993年だから、2016年の終わりを迎えようとしている今、インストラクションの量は半分とは言わず、もっと多くの割合を占めるのではないだろうか。インストラクションの構造を理解し、機能するインストラクションをどうデザインするか、良いインストラクション、悪いインストラクションについて、また送り手・受け手の特性について、書いてある。

インストラクション入門

インストラクションを与える能力、インストラクションに従う能力、このいずれもが何かを成功に導くためには必須である。

インストラクションとコミュニケーションは表裏一体の関係にあり、これは周囲の人々とどう関わったら良いか、どうやったらうまく仕事が進むか、身の回りの世界をどれだけ理解できるか、といった点で重要な役割を果たしている。つまり、情報を手に入れたりそれを体系立てて理解するためには、それをうまく取り扱うための方法が必要である。それを説明するのがインストラクションである。

作曲家が我々に提供してくれるのは、音楽そのものではなく、音楽を演奏するインストラクションである。

なぜインストラクションに従えないのか

普段の生活の中でもほとんどの人が規則を守るように仕向けられている。(日本においては)車は左側走行という具合に。しかしなぜ「言われた通りにしている」のにインストラクションに従うのに苦労するのか。しばしばインストラクションの目的を理解するための情報を与えられていないからなのだ。

コミュニケーション能力をみがく

あらゆるコミュニケーションは、ある人間の理解からほかの人間の理解への翻訳作業である。したがって、ある人間の知覚と経験のフィルターを通さなければならないし、すべてのメッセージは翻訳が必要である。

  • コンテクストの使い方を身につけよう
  • メッセージの形式ではなく、内容に注目しよう
  • 抽象概念を具体的描写に移し替えよう
  • メッセージがこれぞという相手にストレートに伝わるようにしよう
  • 誤解をただすための質問能力をみがき、情報を引き出そう
  • 聞く能力を高めよう
  • メッセージをすっかり理解するまで、感情的にならないようにしよう

送り手と受け手

我々は毎日インストラクションの送り手と受け手の両方の役を演じている。より良い送り手となるには・より良い受け手となるには自らのインストラクションのスタイルを理解することが欠かせない。まずは己を知ろう。すると対人関係の分析が行えるようになる。

インストラクションのシステムと構造

インストラクションはたんに何々せよというメッセージではない。構造を理解しメッセージがうまく伝わるように配慮しなければならない。

  • 送り手
  • 受け手
  • 内容
    • 種類
      • 過去指向で知識の移転に関わるもの
      • 現在指向で行動に関わるもの
      • 未来指向でなんらかの行動を求めるもの
    • 構成要素
      • 1 使命 Mission
        • あるインストラクションがなぜ与えられるかを説明するもの。使命を認識すれば、手段や形式を内容と混同したりすることなどが抑えられる
      • 2 最終目的 Destination
        • 目的はスコープを定める
      • 3 手順
        • ほかのすべての構成要素が方向づけられる実際の指示内容
      • 4 時間
        • インストラクションの実行にかかる予想時間。間違いがあった場合にそれを知ることができるし、不毛なあるいは間違った方向への努力を減らすことができる
      • 5 予測
        • インストラクションに安心を与える要素で、実行中に出くわすであろう自体を示す。時間に関する誤解や不明瞭な目標をただすことができる
      • 6 失敗
        • 実行する側が間違った場合に関する指摘。フラストレーションを軽減するのに効果的である
  • チャンネル
    • メッセージの形式と体裁。インストラクションの表現方法
  • コンテクスト
    • インストラクションが投げ込まれる場面で以下の3つのレベルがある
      • すぐ周りの環境
      • その実行に伴う影響といったより広い適用範囲
      • すべての関係者をとりまく経済的・社会的状況

エンパワーメントが組織を活かす

エンパワーメントによって、人は与えられたインストラクションを超えることができる。

  • エンパワーメントは権利と責任を与える
  • エンパワーメントはインストラクションへの依存を減らし、それを誤解する可能性を最小限にする
  • エンパワーメントは独創的なアイデアを奨励する

インストラクションの受け手

インストラクションを受けとる側にも注意事項と責任がある。

  • 自分で解釈した上で対応しよう
  • インストラクションを理解できない場合は確認しよう
  • 正しいインストラクションかどうかを見極めよう
  • 対応方法を選ぶ権利が自分にあることを認識しよう

感想

インストラクションという切り口そのものが面白かった。その概念を手に入れられたのが良かった。伝えたいメッセージがうまく伝わらないことは往々にしてあるが、本書のインストラクションという物差しはそれを改善するためのアクションを取りやすくしてくれる。ケースバイケースでその場しのぎの改善しかしていなかったらいつまでたっても本質的なコミュニケーション改善は期待できないように思える。インストラクションのうちの何が自分に足りないのか、自分自身を理解するところから始まる。

本書は大きく捉えればコミュニケーションを主題としている。特に仕事上のコミュニケーションを改善するヒントが詰まっていると思う。上司と部下だったり、経営者と従業員という関係性を前提とした話が多くある。そのため会社で働いている人であれば、日常の仕事風景のイメージが理解を深めてくれると思う。後半はコーチングの話となっているので、人を育てる立場の人は色々と学べるはずだ。

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文体練習

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金山裕樹ほか『いちばんやさしいグロースハックの教本 人気講師が教える急成長マーケティング戦略』

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グロースハックとは、製品開発とマーケティングの中間に立ち、プロダクトの中に成長の仕組みを組み込んで、その結果をデータで判断して改善していくこと。本書はその考え方と方法を解説している。他のスタートアップのフレームワークを解説した書籍より、具体的な内容に触れているように思う。基本的に1見開き1トピックという構成なので、気軽に読める。

ARRRA(アーラ)モデル

著者は、ARRRAモデルの利用を提唱している。ARRRAモデルとは、Activation(ユーザー活性化)、Retention(継続)、Referral(紹介)、Revenue(収益化)、Acquisition(ユーザー獲得)の各ステージの頭文字の集合で、この順番で施策を回していくことがサービスの成長への近道だと説いている。グロースハックにおいて最も有名なモデル「AARRRモデル」が実際の施策を行う順番になっていないこと、また離脱率に重点が置かれていることから、これの欠点を補う形で作成された。アクティベーションの概念を拡張し「ユーザー体験を最大化」することに焦点を合せたARRRAモデルを、本書ではそのステージに沿って順番に説明している。

グロースステージとKGI

明確なゴールがなければ正しい施策は行えないと筆者は指摘する。そこで、グロースステージチェックシートと照らし合わせて正しいKGI設定を行うこと、またそれをドリルダウンした正しいKPI設定の重要性を説いている。また、KPIの数値が向上してもKGIが改善していない、もしくは減少してしまったという落とし穴にはまらないように、施策の効果をチェックする際には、KGIとKPIを両方見ることが重要であるとも言及している。

チェック項目 ステージ KGI(ゴール)
アイデアがある アクティベーション/PSF*1
顧客に求められている製品を作れているか
PSF
PSFの検証が完了 アクティベーション/ユーザーオンボーディング
サービスの価値が伝わっているか
翌○再訪率
再訪率50%以上 リテンション
継続して使われるほど満足させているか
継続率
リテンションカーブが滑らか リファラル
友人を招待したくなるほど満足させているか
バイラル係数
バイラル係数0.5以上 レベニュー
お金を払いたくなるほど満足させているか
ARPU*2
LTV*3 > CPA*4 アクイジション
上記全てをクリアできているか
登録数

感想

担当するサービスがどのステージに居るのかがグロースステージチェックシートでわかるのが良い。ステージが分かれば目指すべきゴールも見えて、具体的な施策も検討しやすくなる。まずはこれをやってみようと思える内容だった。

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*1:Problem Solution FIt: 顧客、課題、解決法の前提が間違っていないか

*2:Average Revenue Per User: 顧客単価

*3:Life Time Value: 顧客生涯価値

*4:Cost Per Acquisition: 顧客獲得単価

アーロン・イリザリーほか『みんなではじめるデザイン批評』

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本書は効果的なデザイン批評を日常的な活動のプロセスに組み込むために、批評を分析・定義し、それを与える側・受ける側の良いやり方、悪いやり方、また難しい点について検討していく内容となっている。著者の経験を踏まえた各セクションは示唆に富み、チームや組織、あるいはクライアントとの効果的なデザインに関するコミュニケーションを実現するためのテクニックが詰まっている。本書をひとつのガイドとして、現場で実践し、より的確で効果的な批評とレビューをしたいと思ったし、個人のみならずチームや組織で批評の習慣が身につくように振る舞っていきたいと思った。

批評の理解

価値のあるフィードバックと価値のないフィードバック

デザインのディスカッションの中で頻繁に発生するフィードバックは、デザインプロセスの中では重要な位置をしめる活動ではあるが、その与え方や受け方が大雑把だと有益な会話となりにくい。有益でないフィードバックのその典型が、反応型フィードバックと指示型フィードバックのふたつである。

  • 反応型フィードバック
    • 感情に支配された直感的なフィードバック。個人的な願望や期待、価値観に突き動かされる
  • 指示型フィードバック
    • 助言や提案からはじまる、べき論のフィードバック。与える側はソリューションをイメージしている

何の説明もなしにこれらのフィードバックを与えることは問題で、なぜなら、分析対象の目的やベストプラクティスとの関連が示されないからである。一方、「批評」は、分析対象の利用目的に沿って、デザインの判断がなぜ効果的なのか、また、なぜ効果的でないのか、その理由と根拠を伴うかたちでフィードバックされる。

批評はシンプルな4つのステップで構成される。

  1. デザインの目的は何か?
  2. 目的に関連しているのはデザインのどの要素か?
  3. そうした要素は目的を達成するのに効果的か?
  4. それはなぜか?

この枠組みを利用して、批評を与える側、受ける側、それぞれが目指すべき振る舞いのベストプラクティスは次に挙げたようなものである。

批評を与える際のベストプラクティス

  • 質問で始めよう。デザインの背景や分析の根拠となる情報を集め、信頼性の高いフィードバック材料にするために
  • 感情だけではないか?目的やベストプラクティスに沿ったフィードバックか、一度フィルターを通そう
  • 選択の考えと制約について知る努力をしよう。思い込みは禁物
  • フィードバックのタイミングは慎重に。またそれを押し付けない
  • 長所も批評のうちである。長所を理解し他の箇所に活かすために活用しよう
  • 誰の視点で批評しているのか考えよう

批評を受ける際のベストプラクティス

  • 批評の目的(=理解と改善のためであること)を忘れない
  • 批評者が伝えようとしている内容を理解し、考えてから反応しよう
  • フィードバックの焦点が目的からずれていないかを確認しよう
  • 自らも批評者となって批評に参加しよう

チームにとって建設的な批評は、会話から生まれる。

文化と批評

批評をどのように組織やチームに取り入れるか。批評をサポートする文化は、協働とイテレーションを重視する。

批評のための基盤:ミニ・クリエイティブ・ブリーフ

批評をできる限り完全なものとするためには、デザインに関する建設的な会話をする文化を構築する努力をしなければならない。基盤の欠如は、メンバーが思い描くアイデア、ビジョン、目標が異なった状態であり、非効果的な批評とコミュニケーションの失敗へと導く。

強固な基盤を構築するための一般的なツールとして、ペルソナ、シナリオ、目標、原則の4つを挙げられる。さらに、これを持続的にプロジェクトの認識として機能させるためのツールが「ミニ・クリエイティブ・ブリーフ」である。ミーティングやディスカッションのたびに思い返せるような時間を設けよう。

批評の機会

フィードバックを集めるための活動として以下の3つがある。

  • スタンドアロン型の批評(公式なもの/非公式なもの/その場その場の、批評のスイートスポットで行われる)
    • イテレーションを可能にするためのミーティングあるいはディスカッション
  • 協働活動(ワークショップ/ワーキング・セッション)
    • メンバーをまとめ、アイデア創出や選択のための活動。協働活動に批評を取り入れるとこで、製品の目的にとって最大の価値があるアイデアに関する合意を、どこで達成できるかが明らかになる
    • ブレインストーミング/デザイン・スタジオなど
  • デザイン・レビュー
    • デザインに関する承認を得るために行う活動。批評とは切り離して行うことが望ましい。

注意したいのは、デザイン・レビューは、批評とは別物であるということ。これはデザインプロセスの終わり頃に行われ、承認を集めることが目標の活動である。デザイン・レビューによってもたらされるフィードバックは指示型のフィードバックであり、効果的な批評を行いたいときには適していないことを理解する必要がある。ただし、有用なフィードバックを得るためのツールやテクニックを活用することはできる。

感想

デザインに関するディスカッションは日常的に幾度となく行っているが、その内容について、何をどのような順番で話しているのかについては、これまで深く考えたことはなかった。特に最近、言語でデザインについて会話する機会が増え、改めてこうして体系化されたコミュニケーションガイドが示された上で、分析的にその会話内容を考えてみると、まだまだ的を射た効果的な会話を完全に行えているようには思えない。そういうことに気付かされた一冊。

言葉も平易であるし、フィードバックの種類とそのベストプラクティスを知ることができる点が良い。コミュニケーションを改善していく視点も良い。デザインは言語で説明されるものであるから、コミュニケーションの質を高めることは、製品、サービス、コミュニティにとってプラスになる。

最近自分の属するチームに変化があって、複数人のデザイナーでひとつの製品をデザインしていく環境になった。建設的なディスカッションをどのように行うのか、また文化をつくり整えていくためにどうすればよいのか、という本書のアイデアは、デザイナーチームを導いていく上でひとつの羅針盤となるように思える。まずはお試しということで、本書のメソッドを活用しはじめてみている。

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