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デザイン関連書籍を中心にまとめや感想などを書きます

ポール・ランド『ポール・ランドのデザイン思想』

ポール・ランドのデザイン思想 (SPACE SHOWER BOOKS)

ポール・ランドのデザイン思想 (SPACE SHOWER BOOKS)

ポール・ランドといえばニューヨークのブルックリン出身の偉大なグラフィックデザイナーである。本書は、書名の通りランドのデザイン思想が言語化されまとめられた書物で、1947年のオリジナルに、1970年の改訂版でランド本人が行った文章の修正や図版の差し替えを反映した新版である。氏の思想にこうして新たに触れられることはとてもエキサイティングなことである。

美しく、目的に適うこと

グラフィックデザインとはなにか、まずは氏の定義をみよう。

グラフィックデザインとは――
見る者に美しいと感じさせるもの。
(中略)
だが目的に適っていなければ、
優れたデザインとは言えない。

ポール・ランドポール・ランドのデザイン思想 (SPACE SHOWER BOOKS)』p.9

ランドは、メッセージをビジュアル化して伝える場合に、その手段や空間、媒体の違いに関わらず、ひと目で発信者の意図が理解されなくてはならないと言っている。宣伝文句や絵や写真、デザインが調和したメッセージを伝えなければならないと。美しさと実用性の両立についても言及している。

シンボルと見る者を惹きつけるもの

本書ではこの「シンボル」という言葉がいたるところで見られる。それはデザイナーが果たすべき役割、つまり発信者のメッセージを受け手に伝えるためには、誰にでもわかりやすいメッセージ=ヴィジュアル化されたシンボルが必要であるからである。シンボルは必ずしも単純化されているものではない。「列挙した形容はどのように見えるかを示すのではなく、シンボルを定義する要素なのだ。」p.13

そして、イメージの意味の操作や、シンボルのユーモアといった、デザイナーとして忘れてはいけない意識を思い出させてくれる。ありきたりではないアイデアには必ずといっても良いほどそれは必要なものであると思われる。アイデアの本質を表現するために試行錯誤され生まれたビジュアルメッセージは斬新で有意義で印象的である。このような文脈で紹介される氏の仕事は、より一層味わい深く見れる。

デザイナーの努め

フォトグラム、繰り返し、昨日と今日、活字といった話を経て、最後にランドは締めくくる。

直接的な説明をするのではなく、重要なメッセージを見る者の心に浮かぶイメージとして発信できる作品を作ること。それはデザイナーの努めである。

ポール・ランドポール・ランドのデザイン思想 (SPACE SHOWER BOOKS)』p.95

また「ありきたりで何の変哲もないもののほうが、大抵の人は違和感なく受け入れられるのは間違いない」が「どこかで見たような作品を垂れ流していては」平凡から抜けだせず、喜びを見る者に伝えられないという。

感想

美しさと実用性の両立を広告の領域で目指した氏の思想には励まされる。美しさに偏りすぎたり、実用性に偏り過ぎたりするのではなく、そのいずれの質をも高めようとする姿勢に共感する。ありきたりは簡単で受け入れられやすいが面白みはない。ランドの仕事は、芸術作品としても家に飾っておきたい親しみやすさがある。

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