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デザイン関連書籍を中心にまとめや感想などを書きます

佐藤郁哉『質的データ分析法』

質的データ分析法―原理・方法・実践

質的データ分析法―原理・方法・実践

質的研究における「薄い記述」を「分厚い記述」に変えていくための方法や手がかりを提供してくれる。以下には、学びの多かったトピックを挙げる。

現場の言葉を学問の言葉へ

質的研究における意味の解釈や分析は、「現場の言葉」を「学問の言葉」へと移し替えるプロセス、またそれの往復運動であること。両者の世界に深くコミットし、それらをつなげることが目標となる。これにほころびが現れたとき「薄い記述」としての意味世界の関係図が出来上がる。また、これは自然言語間における翻訳作業に近いものがあり、様々なレイヤーでのコンテクストの把握が肝になってくる。

定性的コーディング

データを圧縮して扱いやすくするコーディング作業の実例。脱文脈化されたセグメントは、新しい文脈に組み込まれてゆくことを想定しているので、コーディングは、翻訳という側面に加え、編集作業としての一面もある。具体的には部分の内容を含むコードを「小見出し」的につけていく作業が定性的コーディングといえる。

他手法との距離性

定性的コーディングは、質的コウディング、内容分析、テキストマイニングKJ法とは本質的に異なる分析技法である。定性的コーディングは、セグメント単位で見たときはじめて明確なものとして浮かび上がってくる意味世界を扱ってるのに対し、その他の技法においては、単語や文節レベルでの文字テキストの意味が主たる分析対象になっている。なお、KJ法は発想法としての性格がある。

焦点的コーディング

焦点的コーディングという手続きは、研究がある程度進展してきたときに、「むしろかなり抽象度の高い、しかも比較的少数の概念的カテゴリーに対するコードを選択的に割り振っていき、またそれらの概念同士の関係について明らかにしていく作業」である。

事例 - コード・マトリックス

「事例 - コード・マトリックス」は、報告書のストーリーの骨格を明らかにして再文脈化するのに役立つ。これは7つの「薄い記述」になることを免れることに貢献する。木を見て森を見る、森をみて木を見ることを支援する。

文書 - コード・マトリックスからの成長

文書と事例が一対一で対応してない場合は、文書 - コード・マトリックスをいったん作成し、事例 - コード・マトリックスに組み替えていく手続きが必要になることが多い。

トライアンギュレーション

複数技法を活用することは対象を様々な角度から見ることができるので、説得力のある議論にするためには効果的である。

感想

これまで、質的なデータに触れることが多いにも関わらず、それをどのように扱ってよいかがわからないという課題が自身にあった。これに対するヒントが得られることを期待して本書を手にとった。我流にもプライベートなブログやアプリケーションを利用して日々、気になった情報や開発・研究に活かせそうな情報をストックしている。とは言え、本当にこれでいいのかという疑問は晴れないままであった。

本書を通読して理解したことは、一つ目に質的データとはなにか、二つ目にそれをいかにして扱うか、ということである。事例『死のアウェアネス理論と看護―死の認識と終末期ケア』 を交えた解説は非常にわかりやすい。情報整理の指針となり得る定性的コーディングを一度活用してみたいと思った。

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